カメラを構える旅行者を、よく見かけましたが、大抵はデジタルカメラを持っていました。

パリの町並み

パリの町並み。広角レンズで

コペンハーゲンの街角

こちらはコペンハーゲン、標準レンズ

コペンハーゲンの街角

被写体に寄って撮る。コペンハーゲン

今回の旅行に、デジタルカメラと、一眼レフ、両方を持っていきました。どちらもカメラですが、私にとって、デジカメは記録する道具、一眼レフは写真を撮る道具です。デジカメの「画像データ」を、「写真」と呼ぶことに、未だに幾分の躊躇があります。未だかつて、デジカメの「写真」を一度も印画紙に焼き付けたことがありません。全てはパソコンの中です。

ですから、写真を撮りたい、と云う希望がある以上、一眼レフを持っていったのは必然なのです。私が今ひとつ、デジカメを信用していないこともあります。最新のものは随分よくなっているのでしょうが、私のデジカメ(もう3年ほど前に手に入れたもの)は、今ひとつ思い通りになりません。しかし、一眼レフは嵩張ります。私の所有する中で最も小さい、50ミリのマクロレンズと、20-35ミリの広角ズームを選びましたが、それでも装備重量は2キロを超えていたと思います。

広角ズームは、広い範囲を写すことが出来ますが、遠近感が誇張され、画面の周囲が歪みます。それがまた面白い効果を生むこともありますが。比較的手ぶれに強いということが云えます。一方、広い範囲が写りますので、無理にいろいろなものをフレームに入れてしまう傾向があります。散漫な写真になりやすいのです。

50ミリマクロの方は、20センチくらいまで近寄って、大写しにすることも出来ますが、いわゆる標準レンズとして使うのが、今回の目的。目に見える景色をおおむねそのままの雰囲気で伝えます。

考えてみると、今まで随分と写真を撮っていますが、純粋に景色を撮ると云う経験がありません。こども達を写したり、いろいろな「もの」を写しましたが、風景を写していません。例えば、お城の写真は、一見すると風景のように思いますが、あくまで、お城というものを写しています。撮った写真が出来上がってきて、それらを眺めて思ったのです。風景の写真は、「もの」を希薄に扱って、その場の雰囲気を写すものだと。

そうやって考えると、広角レンズで風景を写すのは実に難しい。思うに、広角レンズを使うときは、被写体に近寄らなくてはなりません。このレンズは、ごく近から、遠くまで、広い範囲に焦点が合いやすいのです。そして、近くに寄っても相当広い範囲を写すことが出来ます。寄らなくては、とは思うのですが、いざ、景色を前にすると、全てをフレームに収めようとして、じりじりと後ずさりしてしまう。貧乏くさい写真のできあがりです。

標準レンズは、おおむね見たとおりに写りますので、カメラを向ける好奇心と、シャッターを切る勇気が必要です。

随分沢山撮りましたが、景色の写真と言えるものは、ごく僅かでした。ほとんどは、建物の写真や、海や空の、要するに、「もの」を写した写真になっていました。


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